もう一度、今のステージのやり直しができたら…」と私ならずとも

思ったことがあるでしょう。それは、心もからだも演技する状態に

なっていなかったからです。 

 

ときには、熱演をすればするほど、自分の芸が空回りすることも

あります。客の反応と、自分の演技の間(ま)が一致しなかったり、

やる気を起こして舞台に 上がっても、頭の中では先へ先へと進むものの、

自分が思うほど、からだがついてこなかったりもします。 

 

それには、いろいろな原因があると思われます。舞台に出る前に、不快なことがあったり、タネの仕込みがスムーズにいかず、イライラしたままステージに上 がったり、演技中に頭の中で、別なことを考えていたならなおさらです。 

 

また、ステージの出番が、朝の早いときだったり、舞台に出るまでの待ち時間が長すぎたり、ときには、待ち時間の間に一休みのつもりが、一眠りをしてし まったときには最悪です。いくら気力を充実させ、集中力を高めようとしても、心とからだのバランスが整ってくれません。 

 

精神的な安定は、深呼吸を数回繰り返すと、落ちつきもしますが、からだはまだまだ舞台に出る準備ができていないのです。 

 

その反面、掛け持ちで次のステージに出たときや、何らかのトラブルで演技時間ギリギリに飛び込み、タネの仕込みや準備もそこそこにステージに上がったと き、のりの良い舞台と、客の反応の良さに、自分自身で驚くこともあります。 

 

これは、緊張とあせりが、以外と心身を充実させるウォーミングアップをしていたのでしょう。これを自発的につくり出すため、ステージに上がる前に、からだを整え、ステージで演技ができる状態まで、自分自身でウォーミングアップをしなければいけません。 

 

それにはまず演技の開始までに、からだを眠りからさますことです。つまり、からだをほぐすには、こまめにからだを動かしましょう。ほんのわずかな時間でも、気分転換になりストレスの解消にもなります。歩き回ったり、深呼吸を二、三回すると大脳に刺激が加わり、頭の中はスッキリします。 

 

より効果があるのは、スポーツ選手やダンサーがウォーミングアップのために行う柔軟体操です。しかし、マジシャンがウォーミングアップのため、仲間の前で全身運動を行うことは照れくさいものです。 

 

ほんのわずかな時間で、もっとも手っとり早く、簡単で場所をとらず、効果のある方法があります。それはただ単に飛びはねることです。肩の力を抜き両手を ダラリとさせ、10回ほど飛びはねてみましょう。からだは暖かくなり、血のめぐりがよくなるのがわかるでしょう。 

 

マジシャンは指先の運動も必要です。手先、指先の運動はハンドリングを良くします。コインやボール、カードのマニピュレーションは、テクニックの練習をしながら、ウォーミングアップできる最も効果的な方法です。 

 

血行が良くなると、集中力が増し、頭の働きも良くなり、ステージでの動きもスムーズになります。

飛び跳ねて心身を眠りからさまそう

©北見マキ ミステリー空間